そごう・西武は10月15日、改装中の西武池袋本店で、7階を11月6日から、8階を12月9日から順次開業すると発表した。7階は衣料品や雑貨の15店と催事場のイベントホール、8階は衣料品やライフスタイル用品の29店と美術空間「アートフォーラム」で構成する。
リリースは7・8階の開業を、改装の「総仕上げ」と位置づけている。一見すると改装工事が完成するようにも聞こえるが、これまで使ってきた「グランドリニューアルオープン」という言葉はリリースにはみられない。年内の改装の完了についても「本館(南側)」と範囲を限って書いている。フロアマップでは、「2027年1月以降にオープンするショップ・ゾーンがあるフロア」として、別館・書籍館の一部のほか、本館地下2階の中央・北ゾーンも2027年1月以降の開業とされている。こうした言葉の使い分けからも、今回の開業は改装工事の一区切りではあっても、西武池袋本店全体の完成ではないことが読み取れる。
今回のリリースで改めて注目されたのが、地下2階の生鮮食品と酒の売場だ。生鮮・酒売場は2025年4月から休業しており、その行方が話題になっていたが、今回のフロアマップでは2027年1月以降に開業する売場であることを示す印が付いていた。西武が手掛ける生鮮食品と酒の売場が復活することが改めて示され、安堵する声も聞かれた。一方で、本文中には開業の目安や売場構成についての記述がなく、同じく2027年1月から本格稼働する7階のイベントホールと比べると、情報量の少なさが目立つ。日本経済新聞によると、そごう・西武は西武池袋本店の全面開業を2027年春以降と見込んでおり、地下2階の改装完了はもう少し先になりそうだ。
7・8階の売場
今回のリリースは、7・8階を日常生活の「デイリーニーズ」に応えるアイテムと体験がそろうフロアと説明している。
7階は「アフォーダブル・ラグジュアリー」をテーマに、グローバルブランドやプレミアムブランドを、日常的に取り入れやすい価格帯を中心に展開する。衣料品はポール・スミス、セオリー、トミー ヒルフィガー、カルバン・クライン、ラコステ、タトラスの6店で、いずれもメンズとレディースを1つの店で扱う。雑貨やアクセサリーでは、フォーナインズやコーチ、ケイト・スペード ニューヨーク、ヴァンドーム青山などが入る。改装後のイベントホールは、2027年1月の「チョコレートパラダイス」から本格稼働する。
8階は、衣料品とライフスタイル用品を組み合わせたフロアになる。衣料品はオンワードクローゼットセレクト、アンタイトル、ブルックス ブラザーズ、タケオキクチ、ダーバン、ワコール・ザ・ストアなど、百貨店でなじみのあるブランドが中心だ。ライフスタイル用品では、エアウィーヴと西川が専門の販売員による寝具選びの相談を受け付けるほか、タオルや雑貨のブランドがそろう。ネイルサロンやリペアのサービスも入る。美術空間「アートフォーラム」は、若手作家から著名作家まで幅広い作品を紹介する場とし、佐々木香菜子展で開幕する。
ラグジュアリーを重視した1〜6階と比べると、7・8階は改装前の百貨店に近いマーチャンダイジングになっており、意外に感じたという声もあった。7・8階は、当初からこうした売場として計画されていたのだろうか。これまでの発表をたどると、7・8階の説明は次のように示されてきた。
| 発表時期 | 店全体の重点 | 7階 | 8階 |
|---|---|---|---|
2024年6月 計画発表 | ラグジュアリー、コスメ、デパ地下 | ファッション・雑貨・催事場・アートサロン(7・8階共通) | 同左 |
2024年9月 記者会見 | ラグジュアリー、コスメ、食品の3分野。日常の買い物は周辺の店に任せる | メンズ&レディースファッション、催事場 | ファッション、ライフスタイル雑貨 |
2025年6月 リリース | ― | ファッション&グッズ、ライフスタイル、イベントホール、アートギャラリー(7・8階共通) | 同左 |
2025年11月 リリース | ― | ファッション&グッズ(メンズ&レディース)/イベントホール | ファッション&グッズ(メンズ&レディース)、ライフスタイル/アートギャラリー |
2026年5月 リリース | ラグジュアリー、コスメ、デパチカ、ライフスタイル。「日常と非日常が融合」 | ― | ― |
2026年10月 リリース | ファッション、ライフスタイル、サービス、催事を結び付けた百貨店モデル | ファッション&グッズ(メンズ&レディース)/イベントホール。「アフォーダブル・ラグジュアリー」「デイリーニーズ」 | ファッション&グッズ(メンズ&レディース)、ライフスタイル/アートフォーラム。「デイリーニーズ」 |
※「―」はその発表で該当する記述がないもの。
2024年6月の計画発表
西武池袋本店、“新しい百貨店へ” 2025年夏にグランドリニューアルオープン(そごう・西武、2024年6月10日)
そごう・西武は2024年6月、西武池袋本店の全面改装を発表した。商品構成は「ラグジュアリー」「コスメ」「デパ地下」の3分野を中心に強化するとし、7・8階は「ファッション・雑貨・催事場・アートサロン」の階として2025年夏から秋に開業する予定だった。
2024年9月の記者会見
西武池袋本店、開業以来初の全面改装の狙いとは? そごう・西武が説明(FASHIONSNAP、2024年9月12日)
2024年9月の記者会見では、8階を「ファッション ライフスタイル雑貨」、7階を「メンズ&レディースファッション 催事場」とするフロア構成が示された。同社は会見で、百貨店の売場をラグジュアリー、コスメ、食品の3分野に絞る方針を説明した。日常の買い物はヨドバシカメラや無印良品、ロフトといった周辺の店に任せ、西武池袋本店は「非日常」の強みを打ち出すという考え方である。
2025年6月のリリース
西武池袋本店、リニューアルオープン第一弾はコスメティックスフロア(そごう・西武、2025年6月6日)
3階の化粧品フロアの開業を告知したリリースで、今後の開業予定もあわせて示された。7・8階の内容は「ファッション&グッズ、ライフスタイル」「イベントホール」「アートギャラリー」と記され、開業時期は2026年1月以降とされた。
2025年11月のリリース
西武池袋本店 リニューアル 11月~12月に5フロア47ショップがオープン(そごう・西武、2025年11月21日)
高級ブランドのフロアの開業を告知したリリースで、館全体のフロアマップが掲載された。7階は「ファッション&グッズ(メンズ&レディース)/イベントホール」、8階は「ファッション&グッズ(メンズ&レディース)、ライフスタイル/アートギャラリー」となっている。
2026年5月のリリース
西武池袋本店リニューアルアンバサダーに菜々緒さんが就任! 26年、初の全面改装によるグランドリニューアルオープン!(そごう・西武、2026年5月22日)
このリリースは、店全体の重点分野を「ラグジュアリー・コスメ・デパチカ・ライフスタイル」と説明した。2024年に掲げた3分野に「ライフスタイル」が加わり、改装後の西武池袋本店を「日常と非日常が融合する」買い物の場と表現している。同じリリースは、西武池袋本店を「何でも揃う場所」から「選び抜かれた価値が揃う場所」へ変えるとも説明している。
2026年10月のリリース
西武池袋本店 11月から順次7階・8階リニューアルオープン(そごう・西武、2026年10月15日)
今回のリリースのフロアマップでは、7階が「ファッション&グッズ(メンズ&レディース)/イベントホール」、8階が「ファッション&グッズ(メンズ&レディース)、ライフスタイル/アートフォーラム」となっている。フロアの区分は2025年11月のフロアマップとほぼ同じで、美術空間の名前が「アートギャラリー」から「アートフォーラム」に変わった。
また、売場の説明はこれまでの発表より具体的になった。リリースは7・8階を「デイリーニーズ」に応えるフロアとし、7階を「ともに楽しむ」ファッション空間、8階を「これが欲しかった」が見つかる場所と表現している。8階については「眠る」「整える」「贈る」「長く使う」といった暮らしの場面を挙げ、日々の暮らしに合った買い物の場を提供するとしている。店全体については、7・8階の開業によって、ファッション、ライフスタイル、サービス、催事を結び付けた新しい百貨店モデルが完成すると説明している。
「日常」の位置づけ
これまでの発表を並べると、7・8階の売場の種類は2024年9月の時点からほとんど変わっていない。8階に「ライフスタイル」の売場を置く構想は2024年9月にすでに示されており、2026年5月には「ライフスタイル」が店全体の重点分野の一つにもなっていた。
一方で、日常の買い物の扱い方には変化が見られる。2024年9月の記者会見では、日常の買い物は周辺の店に任せ、西武池袋本店は非日常の強みを打ち出すと説明しており、日常の買い物とは距離を置いていた。今回のリリースで用いた「デイリーニーズ」は日々の需要という意味であり、7・8階を日常の買い物ができる売場と位置づけたといえる。7階の「アフォーダブル・ラグジュアリー」というテーマも今回初めて示されたもので、1〜6階に集まる海外の高級ブランドとの対比の意味がありそうだ。
2024年の会見で日常の買い物を担う店として名前が挙がったロフトは、現在、本館南ゾーンの9〜12階で営業している。9階には美容室やペットショップなどが、LINKS IKEBUKUROの専門店として入居している。7・8階は、これらの売場へエスカレーターで向かう客の通り道にあたる。上の階へ向かう客にも立ち寄ってもらいやすくなることも、考慮に入れているのだろう。
高級品を軸に、日常の買い物の売場も
今回の開業で本館南側の売場はそろい、リリースのいう「新しい百貨店モデル」が完成に近づく。

高級品を軸にする方針は、今後も変わらないだろう。ヨドバシHD池袋ビルに併設された駐車場の4階では、7・8階の開業発表に先立って、西武池袋本店のお得意様に限ったポーターサービスが再開されていた。改装を機に一時中断していたサービスだ。駐車場の一角には暖色の明かりがともる専用の受付が設けられ、その前には専用の駐車スペースも確保されている。お得意様を迎える体制を抜かりなく整え直していることからも、外商顧客やお得意様を重視する姿勢が窺える。
一方で、改装の計画が示された当初は、全館を高級ブランドで埋めるかのようにも見えていたが、それも正確ではなかった。今回発表された7・8階の出店ブランドには、比較的親しみを感じたという声もある。改装前の西武池袋本店には、外商やお得意様に限らず、普段の買い物で通っていた客も少なくなかった。改装の間に足が遠のいた人も含め、そうした客が再び訪れるきっかけになる売場ができることには、安堵を覚える。高級品の売場と日常向けの7・8階が、全面開業に向けてどう組み合わさっていくのかに注目したい。






早速解説記事ありがとうございます。 改装工事が延期延期の繰り返しだったことを改めて実感しました。 7・8階は思った以上に日常寄りに寄せてきましたね。売場空間はどのようなデザインに仕上げてくるのか気になるところです。 ここまで来ると、来年で改装は一区切り?って感じがします…(三省堂の跡地はどうなることやら)。